ワークショップの感想と考察

みんなの感想

■ 帰宅後に「どうだった?」と聞きましたら「思っていた以上に楽しかった!」と顔をほころばせながら嬉しそうに言っていました。
「(名札に書いたバカピグミー名)」という名前を気に入ったようで、家にかえってもしばらく胸につけたままでした。今は机の目の前に貼っています。
寝る前にも「今日な、ぼく、森に行った」「そこでゾウにも会った」と教えてくれました。よほど楽しかったんだろうと感じ入りました。私は参加しませんでしたが、きっとスタッフ先生方のご準備と試行錯誤がとても充実した内容だったのだろうと思います。おやつに頂いたビスケットとハチミツもとても美味しかったといっていました。

■ ワークショップ参加中は「うちの子にはまだ難しかったかなー」と思っていたのですが、帰ってからも、ことあるごとに「バカピグミーはこうだったねー」と子どもの方から話をしてくるので本人たちには感じることも多かったんだなーと改めて参加して良かったと思いました。ワークショップの参加の次の週、縄文・弥生時代のワークショップに行って、竪穴式住居やまがたま、包丁をつくったのですが、これもバカピグミーの葉っぱの家、おまもり、狩猟生活などと結び付けたり比べたり。翌日動物園に行ったら、森で出会った動物やアフリカの動物を見つけては実際に森にいる姿を想像したり。帰ってからも広く世界とつながっているようで、日々が、子どもにとって学びになっています。

■ 買ってきたお弁当を食べてなんだか味気ないね。味がしないと感じるのはどうしてなんだろう、って話をしました。バカ・ピグミーのように自分で狩りをして、自分で獲ったものを口にする方がよっぽど食べた感じがするのかもしれないね。お金を払えばすぐに食べないものを食べられる環境は楽だけど、それが幸せってわけじゃないかもね。

■ 食べものをスーパーで買うのが当たり前じゃない暮らしもあるんだね、バカピグミーの人が日本に来たら、大きな食べ物を手に入れても皆でダンスして喜ばないなんて変なのって思うんじゃない?と言っていました。

(以上「アフリカの動物と精霊に会いに行こう!」ワークショップの感想から)

● 自分の動物やクランに誇りを持ったり、動物のもつ力が自分に宿るように感じます。同時に他のクランへの尊敬の念も生まれました。不思議だなと思いました。
● なりきってみた動物と一体化した気持ちになり、その動物への誇りや敬う気持ちになりました。ただ、その動物へ感謝するとかいう単純な気持ちでなく、きっとなりきってみないと生まれないような気持ちだと思います。
●「動物の方が人間の数倍も崇高な生き物なんじゃないか」という感覚になりました。動く物と書いて動物ですが、その動物たちからすると、人間の方が「動く物」であって、食べさせてあげないと生きていけない生き物と認識してもらえている、そんな今まで考えたこともなかった不思議な視点をいただくことができました。子供の「なぜ」「どうして」という深い核心をついた質問や疑問、「こう思う」「こうしたい」という発想力にはいつも驚かされます。
● 日本以外のことはほとんど知識がなかった娘ですが、面白そうだからちょっと行ってみようかとほんの興味本位で参加し、終わってからは次のワークショップの時は全部に行ってみたい!と違う国やその土地の人々の生活に興味を持ってくれたようで嬉しいです。
● 実際にカエルの動きを真似てみると、これまで絵本や図鑑、実物などで見たカエルがより自分に近い存在に見えてきました。
●  自分たちの世界観が、いかに(小さい)限られたものであるのか、いかに視野が小さいか気づかされました。

(以上 カナダ先住民「動物になってみよう!」感想より)

■ 多彩なプログラムも順序良く、かつ興味深いものが選ばれていて、楽しく参加することができました。文化に関する名称であるとか説明よりも、そこに人間がいて、何を思い、表現しているのかを知ることはとても大切なことだと思いますので、それが学べたことはとても良かったと思います。帰路の満足感は子どもと分かち合うことができ、幸せした。となり町の風習でも学ぶように、地球の反対側の様子を感じとれるって、すごいなと思いました。

■ 日本とは異なる文化があることを、1つの国、地域を詳しく取り上げることで理解できました。世界中の国についてこんな形で理解出来れば、誤解や偏見も持ちようがなくなるなと思いました。

(以上 「アンデスの世界・神殿のひみつ」ワークショップの感想から)

●「一つとして同じ劇はない」ということを肌で感じることができた。現地の方々も同じような経験をされているのかもしれないと考えると、ただ仮面をつけて踊って異国情緒に酔いしれるといった、表面だけの文化体験以上のものをこのワークショップを通して経験することができたと思います。
● 即興劇とはいえ、本場のトペンとは似ても似つかぬものになるのではないかという不安がありましたが、蓋を開けてみると動画で観たものと同じような雰囲気の感じられるものになっていて、失礼な言い方かもしれませんが、良い意味で裏切られました。動画を見たり文献を読んだりするだけでは得られない、バリの人々の生活感覚や演者視点でのトペンの雰囲気などを、生身で体感することができたように感じます。現地の実際の雰囲気とはまだかけ離れているのかもしれませんが、それでも間違いなく現地の人々の感覚に近いものを体験できたと思います。
● バリと言えばお寺やリゾート地といったざっくりとしたイメージしか無く、ほぼ無知でした。人々の暮らしからお祭りの意味まで、実際に自分の身体を動かして学べて想像以上に楽しめました。
● 仮面をつけるとスムーズに別人格になれると感じました。初めての文化に触れて、世界が広がりました。バリに行ってみたいと感じました。

(以上 「バリ島の仮面で変身しよう!」ワークショップ感想より)

考察- みんなの感想をもとに

例えば、アフリカの森奥深くに棲む男の子が見る「木」は、日本の当たり前の暮らしから想像する「木」とは、きっと違う。彼の見る「木」に近づいてみたい ――ワークショップで、みんなが試したロールプレイや、モノゴトの即興的な創作などにより、どんな「学び」がその場で起こっていたか、以下の書籍や論文にまとめてみました。

ここでの「学び」は、先生があるまとまった知識を教えるという学び方ではありません。異なる文化と衝突し、混ざり合い、融合して、どんな新しいものが生まれるだろう?という学びです。その「遊ぶ」ように楽しい出会いのなかで、自然環境や世界の新しい見方を子どもたちが生み出すことを、保護者や研究者や俳優、みんながサポートする場をこれからも目指したいと思います。

【書籍】

・飯塚宜子 2021 「教室で再現するフィールド-パフォーマンスによる北米先住民カスカの民族誌」『人類学者たちのフィールド教育-自己変容に向けた学びのデザイン』第8章、 箕曲在弘、二文字屋脩、小西公大編著、pp. 159-180、ナカニシヤ出版

【論文】

・園田浩司、飯塚宜子 2021「文化の協働的理解―アフリカ狩猟採集社会の象狩りをめぐるワークショップ」『国際理解教育』27:23-31(査読あり)

・飯塚宜子、園田浩二、田中文菜、大石高典  2020「教室にフィールドが立ち上がる─アフリカ狩猟採集社会を題材とする演劇手法を用いたワークショップ」『文化人類学』85(2):325-335 (査読あり)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjcanth/85/2/85_325/_pdf/-char/ja

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