2020年度 国土緑化推進機構・緑の募金海外支援事業助成 「フィリピン・ベンゲット州における鉱山開発地域の森林再生事業」

フィリピン・ベンゲット州における鉱山開発地域の森林再生事業 (国土緑化推進機構「緑の募金」の助成事業 2020年7月~2021年6月)

フィリピン共和国ベンゲット州トゥバ郡において、鉱山開発の影響による生活用水と農業用水の不足という問題解決のために、植樹によって環境再生を図りたいという地域の人々からの声に応答し、アグロフォレストリー手法の事業を実施しました。本事業は2021年度も継続実施することが決定しました。

現地からの中間報告はこちら            English Report  

【事業目標】1.トゥバ郡の有機農家組合(MOSFAI) のメンバーが所有する10ヘクタールの土地に8000本のアラビカ・コーヒーとハンノキ(Alnus)など4000本の日陰樹を、アグロフォレストリーの手法で植栽します。
2.コミュニティ共有地(水源地)の6ヘクタールに、アカギ(Tuai)、フィカス(くわ科)(Tibig, Mala)など7,000本の在来種と1,000本のコーヒーの苗木を植えます。
3.地域の小学校が所有する共有地1ヘクタールに500本のコーヒーと500本のシェイドツリーとしてハンノキの苗木を生徒たちとともに植えます。
4.コミュニティ内外の人に開放する、1ヘクタールのアグロフォレストリーモデルファームを定め、800本のコーヒーと500本のハンノキをシェイドツリーとして植えます。モデル農場の管理には事業地のバランガイ政府と現地NGOがあたります。
5.事業終了後に自主的に植樹を継続するために、苗場を建設し、5000本のアラビカ・コーヒーと5000本のハンノキを育苗します。
6.放置されているコーヒーの古木には更新剪定を行い、若返りを図ります。
7.環境保全、アグロフォレストリーの役割を知らせる講習会を受益者と住民、地域の小学校の生徒を対象に全4回開催する予定です。

【最終事業報告】 新型コロナウィルスの感染拡大による移動制限により、マナラボスタッフによる現地への渡航は不可能であり、現地パートナー団体 NGO コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)と密にオンラインで相談をしながら事業をすすめた。

1&2.苗木運搬の時期と植樹の時期は、予定からずれたものの2021年6月末までに、CGNの調整と、臨時採用の森林官の指導、事業地の住民組織MOFSAIメンバーの積極的な協力で、オオベニゴウカン(Calliandra)4,000本、ハンノキ(Alnus)4,035本、アラビカ・コーヒー10,003本、計18,038本の植樹を終了した。上記の苗木のうち、水源涵養と災害軽減を目的に、アラパンAlapang集落の共有林には2,000本のオオベニゴウカンが植樹され(2020年9月)、ティンマゴンTinmagong集落の共有地には、オオベニゴウカン2000本とコーヒーの苗木250本が植樹された(2021年6月)。共有地の植樹にはMOFSAIメンバーのほか、村役員なども参加した。共有林での植樹に予定されていたアカギ(Tuai)は近隣地域で苗木を確保できず、フィカス(Tibig)はベンゲット州国立大学(BSU)苗場の挿し木による苗を予約していたが、生育しなかった。そのため、地域で入手できるオオベニゴウカンの苗木に変更した。直接受益者はMOFSAIメンバー21名、トーレ小学校、2つの水源共有地である。

苗木運搬

森林官セセットしによる植樹予定地アセス

植樹地モニタリング

 

 

3.トーレ小学校の敷地での植樹は、フィリピンでは感染拡大を防ぐために対面の授業が開始されていないため、2021年6月25日の教育省の定めた植樹デー(Abor Day)に3名の教員と7名の保護者によって50本のアラビカ種のコーヒーの苗木を植樹した。

4.将来的にコミュニティの人たちがアグロフォレストリーを学ぶために訪問できるモデルファームは、キャンプ3村トーレ集落のノルマ・ガボルさんの農園約1ヘクタールとなった。在来の雑木林に400本のハンノキがシェイドツリーとして植栽されたのち、アラビカ・コーヒー1000本が植えられ、順調に生育している。
5.2021年3月16日に苗場の資材の提供と専門家によるトレーニングを行った。5月8日にも専門家を招き、苗木づくりの実習を行った。苗場はキャンプ3村トーレ集落に設置され、5,000本の森林樹種(ハンノキとオオベニゴウカン)と5,000本のアラビカ・コーヒーの苗木を育苗中である。

苗木づくり実習トレーニング

苗場

苗木運搬

 

 

 

 

6.雨季開始時(4ー5月)に予定されていた古木の更新剪定(カットバック)の指導と作業は、コロナウィルスの感染拡大による事業地への移動制限(ロックダウン)により実施できず、使用するミニチェンソー2台の支給のみを行った。事業申請時は仮払い機1台、チェンソー1台の購入を計画していたが、MOFSAIメンバーの居住するキャンプ3村とキャンプ1村の二つの村間の距離が4キロほどあり、それぞれの村ごとに機材を購入したいという申し出を受け、より必要とされているチェンソー2台とした。
7.新型コロナウィルス感染を抑えるための行政による規制により、集会と移動の制限が厳しく行われ、講習会開催日程を変更した。全4回を計画していたが、開催できたのは3回で、人数制限をして開催した。事業開始時(2020年7月)の森林農法についての講習会は集会に関する規制のため開催を断念し、事業を担当する森林官が、MOFSAIのリーダー数名に指導をし、そのリーダーたちがほかのメンバーたちに個々に指導することとした。リーダーたちの指導力が素晴らしく、植栽作業はほぼ予定通り終了した。トーレ小学校で計画されていた環境教育は、対面授業が開始されていないため中止とした。

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