質問回答「バリ島の仮面で変身しよう!」2023年2月19日 地球たんけんたい×人類学カフェ@東京

地球たんけんたい×人類学カフェ「バリ島の仮面で変身しよう!」(東京外国語大学・2023年2月19日)は、午前の部・午後の部ともに実施完了!

参加者から寄せられた「探検中に効けなかった質問やわからないこと」への回答です!

① バリの仮面の祭りの要素がブータンの仏教に似ていると感じたのですが、宗教が違っても2つとも同じルーツを持っているということなのでしょうか? 宗教が違うのに芸術形態が似ていることに不思議を覚えました。
直接に影響があったという話は読んだことがないので、たまたまかもしれません。ただたとえば神様の額に(第三の目ともいわれる) 装飾がはいるデザインが、バリでもブータンでも見られます。
ブータンの仏教もバリのヒンドゥ教もインドのヒンドゥ教の影響を受けているので、そういった神様のイメージで共通する部分があるかもしれません。
② 埋葬について:1)バリ島では土葬後数年を経て骨を掘りだし盛大な葬儀(水牛の飾り棺)を行った後の骨は先祖代々の墓(祠)に安置するのですか? それとも部落や家族ごとに決められた土地に撒くのですか?
2)土葬後に骨を掘りだして代々の祠に納骨するのは中国(ベトナムや沖縄)の険骨(沖縄では洗骨)に似ているのは偶然の一致なのか両者は同じ起源なのかどちらですか? 台湾の例(土葬後10年で掘り出す)
バリでは、一度遺体を土に埋めて、お金をためてからしかるべき時に骨を掘り起こし、それを燃やして火葬します。火葬した後の灰は、海に流します。最近は、お葬式の費用を減らすために、集落でまとめて同じ日に火葬することが多いです。
稀に本人の希望があったり、またはたまたま地元の集団火葬の日が近かったりすると、埋めずに、そのまま火葬にいたることもあります。ということで、土葬の文化とは違うものです。
③ お面の制作は一人の人物が削り出しから彩色までやっているのか?分業?
削りだしから彩色、ひげや髪の毛を付けるところまで一人でやる人もいますが、分業することも多いです。
たとえば色塗りだけは他の人に頼む、というパターンや、色付け前の仮面を買ってきてそれに彩色して装飾をつけて販売する、というパターンもあります。
④ 仮面はみんな持っているのか。 日常生活に根付いているものなのか?
トペンの演者ですと、自分の仮面を持っていることが多いですが、初心者では人に借りたりします。また上演先のお寺にあるご神体の仮面をつけて踊ることもあります
仮面を所有すると、毎日供物をあげることになります。また仮面を買ってしばらくは(しまいこんでしまわずに)目の見えるところに置いておいて、仮面と仲良くなると良い、という人もいました。
⑤ 自分の顔に合う仮面と合わない仮面について。 仮面にも相性があるということは、バリの社会においては、素の顔立ちに反映される性格・人間像と仮面をつけて演じる役との間にも、何らかの関係性があると考えられていたりしますか。
トペンがバリで上演されるときは、一人の演者が複数の仮面をつけることが多いのですが、やはりこの人は王様役が似合うだとか、従者役が上手だとかといった評価があるようです。
素の顔立ちというより、その人の声の質とか、動き方の癖、性格、体形などから、どの役が似合う、ということを考えるようです。
何等かの役柄がとても似合う、ぴったりくるということがあると、その役をやることがその人の(神様から与えられた)使命、運命だと感じられたりします。
⑥ トペンの主体は男性だと思いますが、女性はどこまでトペンに関われるのでしょうか。演者に関しては神聖な役であるシダカルヤを演じる以外は女性も参加できるようですが、例えば女性でも仮面をつくることは許されてるのか、トペンにおいて女性が主体となる役割は存在するのかについてもご教授いただきたいです。
最近、若い女性のダンサーで、王役や強い大臣/戦士の役としてトペンに参加する人たちが少数いるようですが、やはりかなり例外的です。また女性で仮面づくりをする人は見たことがないです。
女性がトペン上演に参加するときには、仮面をつけないで、別のアルジャと言われる歌舞劇の衣装と化粧で出ることのほうが多いです。
昔、トペンとジェンダーについて論文を書いたことがありますので、もしご興味があればご覧ください。
file:///C:/Users/yukak/Downloads/3.%E5%90%89%E7%94%B0%E3%82%86%E3%81%8B%E5%AD%90.pdf
(回答:吉田ゆか子 東京外国語大学)
キャスト:吉田ゆか子、飯塚宜子、園田浩司、弓井茉那、渡辺美帆子、矢野原佑史、貝塚理沙、森田桜雅
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